ガンと漢方(中医学)
中医学(漢方)において基本的に癌は予防できうるものと考えています。なぜなら一つの細胞が発見できる大きさ(1gぐらい)になるまで十数年かかるため、その間に消滅させるチャンスは多々あるのです。そもそもガンとは養生の不足やストレスが原因となって血行障害が起こり、代謝が悪くなることで発生すると考えられます。そのため、自分の長所・短所(体質)をわきまえたうえで、血行を促し、体内の老廃物の排出を高め、免疫力をあげることが予防につながるのです。
中国医学ではガンを特別な病気とは捕らえていません。そのためガンも中国医学の基本原則に基づいて治療を行ないます。その基本原則とは以下の3つになります。
漢方(中医学)の治療の基本原則
整体観(病気をみるのではなく身体全体を見る)
未病を治す(予防が第一、できるだけ早期治療)
扶正去邪(弱っている体を補いながら、邪(ガン)を攻撃する)
整体観
西洋医学の場合どうしても病気そのものに注意がいき患者をみていない場合があるようです。抗がん剤や手術などは必要な場合も多々ありますが、そのリスクを無視して行なった結果、手術そのものは成功したが、患者さんの急激な体力低下により亡くなられたということを耳にしたりします。中国医学はまず病気の部分をみるのではなく、病気を含めたその人を全体を一つのものとしてとらえるのです。
未病を治す
最近では西洋医学でも予防医学の重要性が叫ばれるようになり、健康診断なども定着してきましたが、基本的には病気になった段階でないと治療できません。なりそうな段階では経過観察といって結局なにもせず、ある段階まで放置する形となってしまい、なんのために早期発見したのかわからないということになりかねません。
中国医学では西洋医学で病名がつかないような段階でもその症状などに応じて治療法が確立しています。また家系的にガンがおおいという方にはその方の体質に合わせた薬の選択をすることによりガンの予防が可能となります。
扶正去邪
西洋医学の場合、℃ラに治療が片寄りがちです。西洋医学の基本となる治療の3本柱は手術、抗がん剤、放射線治療の3つですが、これらの治療法いずれも効果はありますが、正常な組織・細胞に負担をかけるためその結果自然治癒力(免疫力)が低下してしまい、再発してくることがあります。
中医学では扶正去邪が基本ですがガン治療に関しては扶正のほうに重点を置くことが多いと思います。これは自然治癒力(免疫力)を強めて自らの力でガンを克服する方法であるといえます。
がんの中医学的解釈
中医学と腫瘍
ガン(腫瘍)は中医学ではお血(血液の滞り)と痰濁(身体の中のどろどろしたもの)の塊と考えています。
腫瘍(がん)のできる原因
疲れ・エネルギー不足(気虚)、血行障害(お血)、ストレス(肝気鬱結)、老化に伴う免疫力の低下(腎虚)、
冷え(陽虚)などです。そのため、それぞれの体質に合わせた原因治療を行いながら、この病理産物(お血・痰濁)である癌を治療して行きます。
疲れ・エネルギー不足(気虚)
十分な休養とバランスの取れた食事が大切です。肉体疲労もストレスの一種と考えることができます。免疫的な面から例を挙げるなら、100m走後ではNK細胞の活性は明らかに低下しているとういう結果が出ています。これを漢方的にいえば走って気が虚したということになります。このような状態に対しては十全大補湯のような元気にする漢方薬が合いやすいです。
血行障害(お血)
最近の代替医療・統合医療などでもがんの発生の基礎のには循環障害が深く関わっているということがわかってきています。このような循環障害に対して漢方薬の活血藥は循環障害を改善する働きがあることが臨床的なレベルで次々報告されています。代表的な方剤は桂枝茯苓丸ですが、これはその部位や体質などによって使う方剤は異なります。
ストレス(肝気鬱結)
これは現代医学では軽視され、尚且つアプローチする方法もなかった点です。しかし現在では世界的免疫学者の安保徹先生と臨床医の福田実先生の提唱する自律神経免疫療法によってストレスと免疫とがんの関係が明らかになってきています。ストレスを受けると免疫の中心であるリンパ球が減少し、顆粒球が増加する。NK細胞の活性化が低下することなどがわかっています。
漢方では自律神経の調節に関わる薬の種類を和解藥(疎肝)いい、ストレスを病気の大きな病因の一つと考えてきました。その代表的な処方が逍遙散や柴胡加竜骨牡蠣湯なのです。
老化に伴う免疫力の低下(腎虚)
老化は避けて通ることのできないものですが、老化を遅くさせることは可能です。老化を別の言い方で表すなら、血管のさびと細胞の劣化、リンパ球の減少をはじめとする免疫力の低下です。ここで重要になるのがリンパ球の減少をはじめとする免疫力の低下です。誰しもが加齢に伴い胸腺が萎縮してきます。それに伴ってTリンパ球も減少してきます。Tリンパ球は免疫機構の司令塔であるため、Tリンパ球の減少は免疫力の低下につながります。これに対し補腎藥の霊芝や冬虫夏草などはリンパ球やNK細胞を活性化することが知られています。
癌は中国医学的には実邪(機能亢進亢による悪い代謝産物)ですが、整体観(全体からみると)としては正虚(体が弱っている)の場合が多いと思います。つまり全体しては弱っているのに局所では機能が亢進しているのです。このように根本原因は体の虚弱であるのに症状がひどい、病状がはげしいケースを中国医学では本虚標実といいます。
この本虚標実を治療する基本原則が扶正去邪(体を元気にして病気をやっつける)なのです。よって治療法には直接的に去邪する方法と体の不足しているものを補い元気になって邪ができないようにする方法の2つを同時に用います。伝統的な漢方藥にはこの扶正(身体の免疫力を上げるもの)するもの(補藥)が多く、去邪(直接がんを攻撃する)するものが少なかったのですが最近注目されている、機能性食品(健康食品)の中に、このような働きのあるものが次々と発見されてきています。そのため実際の治療では扶正去邪には機能性食品(健康食品)を用い、がんの原因の基礎を作る、お血(血行障害)と肝気鬱血(ストレス)に対応する薬を漢方薬で行う。あるいはがんの症状の緩和、や抗がん剤の副作用の緩和に用いる場合が多くあります。